グルメマンガではないと思うのだけれど、いままで見たマンガの中でも、飛びぬけて料理がおいしそうだった、犬童千絵
『三鬼本家の食卓』(ビームコミックス、1月14日発売予定)。
街の定食屋
「みきもと」へ通う御曹司サラリーマン青年と、その女将一家の騒動を描くファミリードラマ。
ただそうした本筋はさておいて、その女将さんが作る料理がとてつもなくおいしそう。常連客はみな、その手料理を求めて日参するという設定だけれど、それも頷けるというぐらい、すばらしい絵。
色川武大氏は、
「喰べ物に関することを記すならば、とにかく、読む者をして口中に生ツバを湧かせるようにしなければならない」(『喰いたい放題』)と言ったけれど、そのマンガ版だな。
別に奇をてらったメニューが出るわけでなし、一番鮮烈な印象を残したのは、カツ丼。三鬼本家の長男に振舞われたカツ丼が忘れられない。こんなに美しく描けるものなのか!と感激。
同じ掲載誌の森薫
『乙嫁語り』でも、中央アジアの
「焼きうどん」(大好物!)を描かれたときは、読んでいたのが寝る前でもあり、腹が減って大層困った。
犬童氏の作品は、雑誌が分冊化されたときに最終回を迎えたそうで、それで買いそびれてしまっていたけれど、今回めでたく単行本化ということなので、これを期にじっくりと読み直したい。