文庫本二冊という分量ながら、さっぱり読み終わらない
『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』(光文社古典新訳文庫)。すごくオモシロイんだけどね。
やはり一番のネックは擬古文。トーマス・マンはこの作品を書くにあたってこうした仰々しい文体を採用したらしいけど、やはり訳文もそれを踏襲しなくてならないため、みっちりねっちり書き込まれている。
で、密度ある文章なので、速読にはぜんぜん向かない。それに早く読んでしまうのがもったいないとも思う。
訳文中に
「影絵」とあって、これはタカヤマ文化史でいう
「ファンタスマゴリー」ではないか――とか、あとはまさにフラヌールという描写もあって、ウィンドウショッピングをやる場面もあったり。
で、そういうことにいちいち突っかかりながら読んでるもんだから、語学修業のてんやわんや度合いもあって、さっぱり終わらない。でもこれ、結末はどうなっちゃうんだろう。