一通り
美学・色彩光学・遠近法の知識がついたところで見ると作品の見方も変わるようで、何の気なしに
「エヴァ」を見ると、マー眼からウロコがぼろぼろと。
気づいた点は二つ。
①作品に登場するコンピューター画面は、バックグラウンドは緑にして、文字はオレンジ色。
②作品後半は、動きまるでなし。画面を支えるのは、レイアウトとバンク映像の編集技術。
まず①についてだけれども、
オレンジ―緑―(紫)というのは、色彩学でいうところの
「等色相差」といって、
三色全てが反対色になるという緊張感を生む組み合わせ。紫色はもちろんエヴァ初号機のカラーリングになっているわけで、なるほど、作り手というのはそこまで考えた上で、画面やキャラクターの色分けをする、というのは大きな発見であった。
(Hess, Robert. http://www.microsoft.com/japan/msdn/columns/hess/hess08142000.asp.)
次は②。制作スケジュールの影響もあってか、後半、絵が殆ど動かなくなるが、あまりにレイアウト(画面構成)とそれまで使ったバンク映像の編集が見事で、それほど気にならない。スタッフクレジットを見ても、毎回レイアウト担当者の名前が出るわけではなく(20話の
鈴木俊二、24話の
摩沙雪・貞元義行ぐらい)、こういう映像をカットバックするうまさというのは、秀逸なオープニングを手がけた、副監督の
鶴巻和哉(つるまきかずや)氏に由来するものだろう。
それでは
「レイアウトがいい」とは理論的にどういうことか、美術や遠近法を勉強して、これに答えは出たのかというと、残念ながら、
否、と言わざるを得ない。今まで読んだ限りでは
、「遠近法というのはこういうもの」と教えてくれる書物はあっても
「遠近法というのはこういう風に使うもの」ということを教えてくれるものは皆無であった。やはり実作がメインになる分野だからか、あまり具体的な方法論というものはないだろうか。「
職業上の秘密だから教えないんじゃないの」という意見も聞かせてもらったが、案外そういうこともありうるかもしれない(違ったらスマン)。