ヴォルテール
『カンディード』(岩波文庫)を読了するも、いくら風刺文学とはいえ、そのあまりの凄惨な筆致にいささかゲンナリとなる。ディドロの軽快さとはえらい違い。
それでも読んでいて面白かったのは、ミクロメガスなる短編で、シリウスの巨人が土星のミニ巨人と地球にやってくるという話。
それで思ったのが、顕微鏡のこと。世に巨人と小人の文学があるけれど、あれはもしかして、顕微鏡と望遠鏡のメタファーなのか?
高山大人の
『奇想天外英文学講義』でも、やたらレンズの話題あったけど、18世紀の天体観測と微小生物への関心が文学になって悪いわけはない。哲学者のスピノザもオランダでレンズ磨きをしているのが生業だったというし。
ただこっちはもう顕微鏡も望遠鏡も当たり前の世界に生きているから、当時の人たちがどんな風にびっくりしたか、それを追体験できないのがさびしい。
(そういう研究に孜々取り組んでおられるのが、バーバラ・スタフォード先生。ただ『エコー・オブジェクツ』以降は間尺が広がりすぎてちょっと手におえない感じ)