むかし、篠田一士(はじめ)さんを愛読していた頃、アウエルバッハと並んでドイツの大物扱いされていた、エルンスト・ローベルト・クルツィウス(クルチウス、クルティウス)。
当時はドイツ語さっぱりだったのと、クルツィウスの代表作『ヨーロッパ文学とラテン中世』はあまりに巨大な作品で、愛読するまでに至らない。
それが先日、長いことほっぽりっぱなしだったジョイス本を読んでいたら、あれ、クルツィウスの名前が。どうやらクルツィウスさんは文学の「目利き」として、ジョイスにも言及してたみたい。
ところがいざ調べてみると、原典には載っているだろうジョイス論が、邦訳版には訳載されてない。24作品のうち、日本の読者に馴染み深いものだけ訳した由。
こうした断り書きのある翻訳書がたまにあって、またそれには相応の理由もあるんだろうけど、参ったなという心境。
くだんの篠田さん曰く、クルツィウスのドイツ語はそんなに難しくないとのことなので、ドイツ語原書を取り寄せてみるべきか呻吟中。
クルツィウスさんは学問のコアにフランス文学があったようなので、全体を見ても損はない気がするけど。ヌー。