(「ミイラにして保存して」というトンデモ遺言を残したイギリスの功利主義哲学ジェレミー・ベンサムさん。最近になって、経済学でよく使われる「効用」の原語が「Utility」であると知る。じゃあ「ユーティリテリアン」の本家本元ベンサム先生にもっかいチャレンジしてみよう。画像はウィキペディアより)
高山宏御大の『奇想天外英文学講義』(講談社選書メチエ)で、スコットランド啓蒙思想の話と、それをやっている稀有の人物として、土屋恵一郎さんのことを教えてもらう。
それから爾来幾星霜、主要な関心は経済学になってしまい、今度は経済に直結する人間の心理を追っていて、結局「功利主義」にたどり着いた。
最近は行動と経済のつながりを追っかけてたんだけど、あまりに身も蓋もない人間像にゲンナリしてしまったけど、そこに「ちょっと違う視点」のヒントがあった。
人間はつい、ある商品が5ドルから10ドルになったというと、その「変化した5ドル」を気にしてしまうけど、モンダイはそこじゃないはずだ、大事なのはある商品に出す予定の「10ドル」でどれだけの満足感を得られるかである、云々。
で、この「最終的な満足感」というのをベンサム先生にならうと、「効用を最大化する」と表現するのだって。
サッカーなんかで「ユーティリティ・プレーヤー」という言葉を耳にするけど、そうか、「人間にとっての満足感」と置き換えると「ユーティリティ」「効用」も掴みやすい。
さっきの行動と経済学の話だと、楽しいこと(効用が大きいこと)も、時間+頻度と共に減少していく、「効用逓減仮説」なんて、日本語だと大変ややこしい説もあったりする。で、それを提唱したのがベルヌーイさん。
で、そのベルヌーイさんが偉かったのは、人間にとって大事なのは「計量可能な富」ではなくて、「その富を使って得られる(はずの)効用だ」と気づいたことにあるらしい。
そんな話を読んで、たしかに美味しいピザ(好物=効用が大きい)は素晴らしいけど、じゃあその10倍の値段のピザを買ったからと言って、効用も10倍になるかはわからない。
いくらピザ好きの人にしても、毎日食べるようになったら効用は減少するだろう。たまに食べるピザだから素晴らしいのであって、毎日食べてたらもうカンベンになるのが人情。
じゃあ効用が最大になる「こと」ってなんだろー、というのが最近のテーマになった。そのテーマはテーマとして、じゃあ「効用」の方も調べておかないとね、というのでベンサムさんが出てきたわけ。
ベンサムさんは『自由論』のジョン・スチュアート・ミルの家にも出入りしてて、幼いジョン少年は「ベンサムおじちゃん」が好きだったそうなので、色んなところで繋がってるんだなーと感慨しきり。
ミルさんの英文はケインズばりに込み入ってて中々読む気にならないけど、『ミル自伝』は吹き出す話のオンパレード、時にホロっとくるエピソードあり、大変おもしろい読み物でした(^∇^)