森薫氏の傑作
『エマ』、連載ではついに
「技、神に入る」。ここまで人はうまくなるのかというその証左であり、その作品を読み、途方もないエネルギーを授けられる。
「『生きていて良かった』と思えることはめったにない。珍しいこととは違う」というのはホッキョクグマを目の当たりにした動物カメラマン・
岩合光昭(いわごうみつあき)氏の弁だが、まさにそういう感じ。たかがマンガ、というのであれば哀れな御仁だ。こういう手合いは詩文を解さなくて酒癖が悪いに決まっている。
こういうエネルギーを与えてくれる存在を心の底から敬っているが、この真反対に、暗い
「私」生活をそのまま垂れ流すことを芸だと勘違いしている文士(もちろんマンガ家も含む)が多数いるのはどういうわけなのだろうか。
自分の話=一人称の話が意味を持つのは、その人間を直接知っている
二人称の人間までであって、
三人称、というのはつまり
赤の他人にとっては全くの無意味でしかない―――というような話はやはり殺風景になってしまうからいけない。
話を本筋の
『エマ』に戻すと、連載誌
『コミックビーム』の来月号で大幅にページを増やしてクライマックスを迎えるとのこと。この
「クライマックス」というのが
最終回を意味するものかどうかは分からないが、物語が佳境に入ったのも事実。愛読している
和泉かねよし『そんなんじゃねえよ』も連載ではラストに突入するとの事で、惚れ込んだ作品が二つとも終了してしまうというのは、盛り上がりを期待する半面、なかなかに複雑なものがある。いや、そういう貧乏臭いことを言うより、素晴らしい結末に期待しよう。
(図版出典:『空間コミックビーム』
http://image.kanshin.jp/img_16/161198/1163619759.jpg)
(陰気な連載もあるので雑誌そのものを強くプッシュすることはできないが、機会があれば『エマ』の部分だけでも立ち読みしていただきたい)