シャーロック・ホームズに登場するレストレード警部、あれも実は探偵である。十九世紀において、
警察=探偵だったらしく、レストレードは犯罪捜査局(CID)所属の探偵だという。
ことのおこりは十八世紀。愛読して止まぬ
『トム・ジョーンズ』(岩波文庫)の原作者
ヘンリー・フィールディングが、警察制度の原型を創案する―――といっても、訓練した若者を捜査に当たらせるようにした、というだけの話。その人数も10人に満たなかったそうである。
それが十九世紀(1829)になって、のちの首相ロバート・ピールが、警察というものを制度化する。ところが新しく出来た職種でもあり、
「大丈夫なの?」という不安も多かったから、警察官になろうなんていう人間は相当アレな人たちだった。組織を維持するために税金も高くなったし、所属している人間もそういう方々だから、まあ、評判はよろしくない。
それじゃあ財源確保のため―――ということで、必要のある個人がお金を払って警察を雇えるようにした―――これが
首都警察法(1839)。調べたい事件や、これこれを捜査して欲しいという時は警察を雇う―――どうもこれが
「探偵(detective police)」の発祥らしい。
現代の感覚からすると、探偵と警察はまったく別のものという印象が強いが、アメリカで初の私立探偵となった
アラン・ピンカートンも推理と調査というよりは体を張って事件を解決するのが本分だったから、分けて考える方がおかしいのかもしれない。シャーロック・ホームズが
「探偵」というもののイメージを固定化させてしまった―――原作者の
コナン・ドイルはこればかりが売れすぎてしまい、ホームズが嫌いだったらしいけれども、後世への影響はよほど強かったと言わざるを得ない。
(探偵っていうと、この表紙のイメージだものね)