高山宏氏垂涎の
グスタフ・ルネ・ホッケ『文学におけるマニエリスム』(現代思潮社)、そういえば読んでいなかったということを思い出し、
ワイリー・サイファーの二作とともにぶっ続けで読んでみたが、いまひとつ感銘を受けなかった。
要するにこれは
リリシズムというものの話になる。
ジョイス的な作家とボルヘス的な作家という風に、無理やり作家のタイプを二分すると、こっちの好みはもう、完全にジョイス派。
荒れ狂うロマンチシズムを抑えに抑えて最後に開放するのがジョイス的な作家というもので、言ってしまえば
「きれい」ということになる。カタルシスがあると言い換えてもいいだろう。ボルヘスにそういうものは全くない――もちろん、ないから悪いというのではなく、これこそ完全に好みの問題。
その伝でいくと、ホッケやサイファーは明らかにボルヘス派で、そこが噛み合わなかったということになるか。ボルヘスも一時期ずいぶん読んで、フランス語の勉強をするときなぞ、仏訳が豊富なのを幸いにあれもこれもと読み漁ったが、いま、一冊も持っていなかったりするからなぁ。嫌いというわけではないんだけれども。
ホッケを熱烈に推す高山宏氏は、そうするとボルヘス派になるだろうか。しかしその肝心のホッケが、翻訳もブックデザインも素晴らしいのに、紙質が悪いのが残念だった。こんなの一生懸命読んだら、目が悪くなるよ。