年末年始は何も見るものがないからなぁ――なんてうそぶいていたら、本当に何も見るものがないので、趣味と実益を兼ねてヴァン・ダインの
『グリーン家殺人事件』(創元推理推理)を読むことにした。
コナン・ドイルに始まってディクスン・カーからエラリー・クイーンまで、推理小説は色々と読ませてもらったが、著述のスタイルが一番しっくりくるのがこのヴァン・ダイン。ときおり、注つきの難語が挟み込まれるのが一部の顰蹙(ひんしゅく)をかっているらしいが、個人的には好きである。
推理小説も当然、文章の世界であるから、その文体に馴染めないとけっこう悲惨なことになる。エラリー・クイーンなんかはその典型で、適当な、というのは、読んでいてストレスを感じない翻訳を探すのにずいぶん苦労した。
こういう翻訳の良し悪しというのか、文章の良し悪しは、それを説明するうちに熱くなってきて、しまいにはケンカになったりすることがあるから、あんまり有難いものではない。
そういう意味で言えば、これはもう翻訳目当てで買ったというのがあって、それが平井呈一訳の
『吸血鬼ドラキュラ』(創元推理)。ちらっとかいなでしただけであるが、そこに書かれている日本語を目にするだけでわくわくする。