ヒトの目は便利にできている。ゆがめてみたり、ズームインしてみたり、ズームアウトしてみたり。それが無意識のうちに行われているから、カメラという道具を使用してもなかなか思い通りにはなりにくい。
(岩合光昭 『ネコを撮る』 p191)
動物写真家・岩合光昭氏の
『ネコを撮る』(朝日新書)をいただいた。広角・望遠・標準といったレンズの選び方、光源の設定、レイアウトなどなど、かなり専門的な
「実践の書」。
(岩合光昭氏)
読んでいてオモシロイな――と思ったのは、岩合氏は、まずめったに
「かわいい」という言葉を使わない。あまり人間の思い込みがあると、自然な動物の姿は撮影できないのだという。
だからこの新書でも、主役はあくまでネコであり、撮影者の方が主役になるようでは魅力的な写真は撮れない、と繰り返し語られている。パンダでもシロクマでも、岩合氏の写真から受ける印象が他の写真家のものとは明らかに違うのは、その辺に理由があるのだろう。