絵を描くようになってはじめて分かる大友克洋氏のすごさ。
『童夢』(双葉社)オモシロイわー。
「遠近法の地獄」とも言うべき構図が続出。ビルとビルとが微妙な形に立ち並んでいるから、これを遠近法的に考えていくと、頭がヘンテコになる。
模写しようかと思ったけど、とても無理! 建築物の立地上、単純に消失点をとって――というのが通じない――うーん、一体これ、どうやって描いたんだろう。まともにやると、画面じゅう補助線だらけになるよ。
あと興味深かったのは、超能力を描かずに超能力を描いてること。超能力
「そのもの」を描くんじゃなく、その力の影響や結果を絵として定着させる。
タイルがめくれあがったり、ビルが壊れたりはするんだけど、いわゆる
「エネルギー弾」(例:かめはめ波)のようなものは一切出てこない。
だから、ものすごい勢いで空を飛んでも、
「スピード感」そのものが描いてあるわけじゃない。ある構図やアングルを的確に並べていくと、読み手の心象にスピード感が発生する、そういう描き方。
こんなすごい人が同時代に出てきたら、どういうショックを受けるんだろう。フォロワー(模倣者)の数がすごかったとも聞くけど、そりゃそうでしょう。
あとは、ここまでうまくなると、ものってどんな風に見えるのかね。それを知るためには大友氏並に描けなきゃいけないんだけど、それもまた果てしない話だよなぁ。