二十世紀フランス思想を一挙わしづかみ!という大著、マーティン・ジェイの
『ダウンキャスト・アイズ』(カリフォルニア大学出版局)。最近読んだ洋書ではベストのオモシロさ。
申し訳ないことに、フランス現代思想に入れ込むほどの関心はないながら、それだけに、この一著でまとめて
「こういうことです!」と教えてもらえるのは有難い。
中でも、デリダのところで、フォログラフ(写真)も、フォト
「グラフ(graph)」――つまり
「書かれたもの」だという指摘には、思わず
「やられた!」という感じ。
中でも、一番興味そそられたのが、Molyneux問題(なんと発音していいか分からん)。要するに、それまで目が見えなかった人が、目が見えるようになったらどうなるか――ということ。
十八世紀に提起されたその問題意識が、ちゃーんと二十世紀の思想にも受け継がれているんですよ――というところは、丁寧に読み解けば、これ以上はない読物だと思う。
今回、読書への関心が戻りはじめたところで出会った一著なので、申し訳ないことに速読で済ませてしまったけれど(でないと読み終わらない)、これは傑作だったなぁ。タカヤマ御大が推薦する理由も分かるというもの。
なにしろ、脚注に出てくる書名が、みーんなタカヤマ・プロデュース(笑)。レイチェル・ボウルビー
『ちょっと見るだけ』から何から、ありとあらゆるタカヤマ本がずらっと並ぶ。
(タカヤマ先生は、その風貌とご発言にも強烈なキャラクター性があるけれど、学問的には非常に「まっとう」なのだ――と、いつもこうした名作に出会うたび思わされる)