さて出雲阿国が創始したという歌舞伎はどんなものだったか。いかがわしい踊りということで処罰の対象になったそうだけれども、残された絵など見ると、ふくらはぎを出してるだけらしい。
ケレンこそが歌舞伎のオリジナルだということで、市川猿之助がスーパー歌舞伎を行い、本来の姿を見せようと尽力した。
スーパー歌舞伎は、公演中、会場上空を宙吊りになって、それこそワイヤーアクション状態で叫び続けるという――
「降りてきていいなさい(笑)」と思ってしまうような、でもそれが元々の形。
そういった歌舞伎の伝統が途絶えてしまうのは、外山正一という文部官僚がイギリスに留学したため。そこで改作されたハムレットを見て、それが演劇の正統だということになり、歌舞伎のケレンがすべてご法度になる。
当時上演されていたシェイクスピアというものでは、ハムレットは死なず、リア王がハッピーエンドだったりする。そんなの見たいか?!というと
「ちょっと見てみたいよねー(笑)」。
Adaptation(翻案)のシェイクスピアしか許されなかったのが、1920年代に入ってやっとエリザベス朝に還ろうという運動が起こり、300年たってようやくオリジナルなシェイクスピアが見られるようになった。
さてここから話はまた王立協会に戻る。王立協会は現在に残る色々な仕組みを発明し、その一つがカード文化。
Credit(信用)という経済制度、国勢調査というシステムを作り出したのも、この王立協会の経済部門。確率論(probability)というのも、この部門の発明なんだそうな。
こういった基本語をひとつひとつOEDで見て欲しい――というのが、タカヤマ講演の骨子。たとえばヴィジュアル(Visual)。こういうものを調べる。
ヴィジュアル・カルチャーをやる上で、Imageという英語を
「イメージ」と安直にカタカナで置き換えて済ましていることが問題だと。
明治時代の翻訳者たちは、言葉がまったくないところから、原語の意味を汲み取って漢字に置き換えた。そういう気合がないからこそ、内容的に上滑りになってしまう、それが現在の学問の問題点だという。
ここから先、視覚化というところから裁判制度についての話になるのだけれど、それはまた次回に。