日本に来るフランス語圏の方とお話していると、日本語は文法も発音もすごく簡単だ、そのかわり漢字がとても大変だ――と、語学として日本語を学ぶ時の共通の印象があると分かる。
そんなに漢字が大変なのか――と思うと、逆に
「どうやって漢字を学ぶのだろう?」ということに興味が沸く。
日本語を母語にしている人であれば、どんなに悪筆な人でも、必ず
「書き順(筆順)」という意識があるはず。こういう
「書き順」について、どんな風にして教わるのだろう?
こういうことを紙に漢字を書きながら拙いフランス語で説明していたら、
「それは、ordre des traitsではないですか?」とお教えいただく。
「書き順」ってそう言うんだ!とすごく驚く。英語にすれば、
「order of traces」になるだろうか。英語でそう言って伝わるのかどうかは知らないけれど、フランス語では
「ordre des traits」ということははっきり分かった。
じゃあ、その書き順にのっとって覚えるんですか?ということを尋ねると、そうではなくて、漢字を
「イマージュ」として覚えるのだという。
フランス語のイマージュ(image)もすごく意味に広がりのある言葉だけれども、これはやはり
「図像」とか
「絵」という意味でしょうなぁ。
それを聞いて、でもいつも使う漢字が1000とか2000とかあるのに、それを全部別々の
「絵」として覚えようとしたら大変じゃないかなぁ――ということが頭をよぎる。
そこまでいっちゃうと話が抽象的になって、とてものことフランス語の質問にはまとまらない。でもやっぱり、漢字を
「絵」として覚えるという話は印象的だったなぁ。
日本語(や漢字文化圏の言葉)を母語としない人にとって、漢字はどういう風に見えているんだろう? 字というよりは、やっぱり絵に見えるんだろうか。
自転車に乗れるようになってしまうと、乗れなかったときのことを思い出せないように、漢字を知らなかったときのことは思い出せないからなぁ。
(フランスの小学校の話をチラッと聞いたら、向こうの国語[フランス語]の時間は、やはりディクテ[読み上げたものを書き取る学習法]をやって覚えるのだという、赤ペンで添削されて、それで覚えるというやり方の由)