今後、移動中は洋書(英語・フランス語)、家では日本語(古文)という棲み分けにしようと思い、積読だった
『御伽草紙 上』(岩波文庫)を読んだら、木幡狐(こはたきつね)という一篇で、ちょっと笑ってしまった。
話自体は狐の嫁入り的な、割と良いお話なのだけど、離れ離れになっていた狐親子の再会が、
「あら珍しや、こんこん、いづくにおはせしぞ、こんこん」(同上、p. 167)というので、とてもかわいらしい。
自分は広くヨーロッパの文学に親しんできたけど、なんかこういう動物がかわいいとか、ほのぼのする、ちょっと笑う、ニコッとする、そんな感覚はあまりないように思う。
『御伽草紙』自体は江戸時代の作品みたいだけど、なんだっけなぁ、ちくま文庫に入っていた
『今昔物語集』の現代語訳で、アコギな商人をこらしめるのに、その商人がキライな猫を使おうということになった。
たしか駕籠のような小さい空間に商人をおしこめて、そこへ子猫をどんどん送りこむというものだったけど、猫が怖くてたまらない商人が身をかがめると、にゃーにゃーにゃーにゃーと猫の声が駕籠いっぱいから聴こえてくる――
民話にありがちな、悪者をこらしめました、しゃんしゃん、というものだけど、妙にユーモラスというか、全体の情景がとても朗らかで、ほかのエピソードは全部忘れてしまったけど、この一話だけ妙に覚えている。
自分がかなりハードな動物好きというのを差し引いても、なんかこういうほっこりする動物の話って、ヨーロッパ文学には少ないんじゃないかな。何より今昔物語の頃からこんなにゃーにゃー言うお話が日本にあったということに、とても感激するのだけれども。
(最近ではそれが行きすぎて、動物が出てこない作品は何か気合が入らないという風になってしまった。書道マンガの『とめはねっ!』も、この大型犬ピースが出てくると反射的に買うようになっているし・笑)