(なんの因果か金融の実学を知るためには数学が必須のため、大のニガテだった数学にいまからチャレンジというビックリ企画。でも肝心なのは数学の「表記」だと気付いたのでホッとする。山本貴光さんの『文体の科学』を読み返したら、自分が調べたことがすでに書いてあったよ。新潮社より1900円(税抜き)で発売中)
人間変われば変わるもので、いまや一番熱心に取り組むのが金融と数学という、もともとはニガテだった分野。
金融の方は幸い経済史を追ってきた関係ですらっと飲み込めるけど、その実学(ファイナンス)となると数式を避けては通れない。
ところが、金融やその他の分野を「分析するために」各種の数式が発達してきたので、「なーるほど、それでこんな計算をしてるのか」と実例つきで教えて貰えるため大変わかりやすい。
ところが、数式となると、まずその表記がわからない。いや、効率性を考えてこうしてるんですというのは納得する。そうじゃなくて、なんで「平均(average)」の略称がギリシャ語の「μ(ミュー)」なの?とか、そういうのが際限なくある。
で、数学史の本に片端から目を通した結果、数学者の多くは「数学の考え方」を重視していて、「なぜそう表現するのか」という表記にはほとんど重点が置かれてない。
その逆に、数学がニガテな人間は「数学の考え方」ではなく、「なぜそう表現するのか」の方につまづいているというミスマッチがあると気付いた。
数学が得意な人が必死で数学の面白さ、美しさ、利便性を訴えてくれるけど、いやいや、こっちが困っているのは表現の方です、という。考え方に馴染めないのではなく、表記に馴染めなかったんだと。
たとえばさっきの平均もそうだけど、英語ならaverageで、頭文字はAになる。ところが実際にはμというギリシャ文字で、これはMのこと。つまり内実と表記にズレがある。
恐らく得意な人は、ズレを全く意識せずに即、数学の「考え方」に進めるのだろうけど、表記も言葉である以上、不合理な略し方をされてると、言語系の人間としては納得がいかない、結果、その先の考え方に進めないというーー
つまり、表記の理由が分かればちゃんと「考え方」に進めるので、平均はAverageだけど、Aはよく使う文字だし、物理の加速度(acceleration)ともかぶっちゃうから、ギリシャ語のμεσος(メソス、平均)の頭文字にしてるんですよーーこういうのが必要だということ。
そこさえ納得できれば、平均を使った分散や偏差にも進めるし、決して「数学の考え方がわからない」わけではないんだ!と。
ただ、数学書は数学が得意な人が書いてしまうので、そうしたミスマッチに気づけないのと、またニガテな人間は人間で、「なぜこの分野がニガテなのか」をそこまで真剣に考えないから、「実は表記の方に原因があった」とは気づけない。自分でも気付いたのはこの数週間だもんな( ´ ▽ ` )ノ
そうやってヤキモキしながら資料を漁っていたら、片野善一郎さんが『数学用語と記号ものがたり』(裳華房)という、地味ながら大変気の利いた仕事をされていると分かった。こういうのが欲しかった!と思っていたので、これはお礼を言わなくてはいけない。
イエスさんも山の上の説教で、「求めよ、さらば与えられん、尋ねよ、さらば見出さん、門を叩け、さらば開かれん」と言ってるのが改めて身に染みたな。そういう意味で言ったのかわかんないけど(^∇^)
ということで、金融の実学を勉強するために数学史を学ぶという回り道も、ようやく光明が見えたので安心しております。もともとは分厚い英語の本を読むはずが、日本語の解説書、その後数学史とエライ遠回りをしたなー。でもそうしないと進めないんだから仕方ない^_^