(高山宏・巽孝之『マニエリスム談議』にも「アメリカ流、現代のマニエリスト」として名前が挙がっていたJohn Updike。この文脈にはビックリしたけど、たしかに凝りに凝った文体という点でヘンリー・ジェイムズと並ぶというのは、ナルホドと納得した次第。Penguin Booksはじめ、色んなバージョンがあります)
「うわっ、なつかしい!」と思わず手に取ってしまったJohn Updike。アメリカを代表する作家で、『Rabbit』シリーズが特に有名。
有名ということでは、Updikeさんは「凝りすぎる英文の代名詞」というくらい、ちょい厄介な相手。なんでも有名大学の創作クラス出身で、その後は『New Yorker』とか、あの手のシャレオツな雑誌でバリバリ作品を発表。
むかーし、英語で本を読み始めたころに手に取った記憶あるけど、その当時の語学力ではついていけなかったのと、あとはアメリカ~ンな価値観が鼻について中座してしまった。
ところが最近、どういう風の吹き回しか英語でそこそこの分量を書く必要があるので、そのための「準備体操」をしたいと思っていた。長いものを書くとなると、助走も必要みたいなんだな。
準備体操でフルマラソンを走る人がいないように、適当な分量と内容のものが欲しいと思っていた時に思い出したのがUpdike。むかーし手に取ったきりで止めてしまった記憶があったから、「今だったらどうなのか」という点で再チャレンジ。『マニエリスム談議』で取り上げられてたのも背中を押した格好。
そしたらこれが案外読めるので、「おおーっ!」なんて(^o^)丿 語学力がついたのが嬉しいと共に、現代小説だから準備運動にもピッタリ。英語で本を読み始めたころを思い出すのも、初心に帰る形で悪くない。
初めてJohn Updikeさんの作品にまともに向き合ってみると、しっかり「現代小説」だったんだな、これ、と気づく。独白でポンポンポンと主人公の思考をつないでいったり、十数ページ前の単語がココで活きてくるんだ!なんて。柳瀬尚紀さんが頻繁に言及してたのもそのせいかな。
まだ読み始めてちょっとだけど、この小説のキーワードは「crack」みたい。これだけ凝りに凝った文章を作る人が、30~40ページでやたら「crack」に出くわすので、「これが大事ですよ」とわざわざ教えてくれてるようなもの。
ところがこの「crack」、めちゃめちゃ意味が広い。主人公が奥さん投げかける皮肉なユーモアも「crack」と言われるし、擬音でもあれば人物の形容詞でもあるという。ピコピコの世界で悪さするのもcrackと言われるんじゃなかったか(綴りは知らないけれども)。
なんにしても自分の好きな現代小説の雰囲気も楽しめるので、しばらくはUpdikeさんを準備体操本として愛用させてもらおうっと。