(令和2年の初読書は、実験化学者マイケル・ファラデーの講演録。これまであんまり化学実験とかにキョーミを感じてこなかったけど、この講演内容はスゴイ!と目を開かれる思い。Machal Faraday, The Forces of MatterはDover Publicationsから税込798円で発売中)
2019年はやたらと自然科学やキカイ工学の本を読んだ一年だったけど、2020年に初めて手に取ったのはこのマイケル・ファラデーさん。
とにかく化学と名のつくものには必ず名前の出てくるファラデーさん。電気関係の用語もほとんどこの人が定着させた格好。
ご当人は小学校すら行っていない環境で、19世紀イギリス一の実験化学者になったのだからスゴイ。またそこにエジソン的なねじくれ曲がった性根の悪さが微塵もないあたり、スゴイ人だったんだなと思わされる。
で、こっちとしては電気関係のことだけ読めれば良かったんだけど、ファラデーさんの講義は連続モノなので、まずGravityから始まってCohesionその他へと進んでいく形。MagnetismとElectricityの話はけっこう後の方。
仕方がないので最初から読み始めたところ、マー、ファラデーさんの説明が冴える冴える。簡潔明瞭ながら、化学の芯は外さないというあたり、相当の手だれ。
実際、ファラデーさんの所属してた王立協会は講演が主な収入だったそうで、そこから各研究員への予算も配分されるわけだから、講演はメチャ重要だったんだって。
実際、実験とその理論化では優秀でも、講演はナーという人が代表になったりすると、とたんに協会自体が左前になる由。それだけにファラデーさんも講演については人のを聴いてメチャメチャ修練をつんだみたい。
で、そのファラデーさんの講演なんだけど、自分が一番感激したのは「基本原理が無理なく覚えられる」ような内容だってこと。
自分で数学やピコピコやって分かったのは、ナンダ、こっちも覚えることはたくさんあるではないか、「語学は覚えることが多くて」と言われるけど、その内容については自然科学やキカイの世界も負けてない。
ところがファラデーさんの話を聞くと、仕組みを原理的に解説するので、それを一般化した理論がストン!とアタマに入るんだな。
光の屈折とか入射角がどうした、というのは、理論だけでキチンと扱おうとするとそれなりに厄介。ところがファラデーさんはGravityの説明と実演をしたのち、光が水に当たるとこうなる、というのを見せてくれる。
だからか!と一瞬で理論がアタマにインプットされるので、このことには感激したな。光の屈折に重力を結びつけるとこんなにスッキリするのか!なんて。
こういう一見明瞭な話は、言われてみれば「なるほど」なんだけど、その素材と手順と説明を関連づけるのは並大抵のことではない。よく思いついたな!という感じ。
新しい分野のベンキョーをするときは、こっちにまだ十分な受け皿ができてないから、ゆっくり進めるしかないんだけど、この受け皿を作るまでの段階でこんなに目の覚めるような思いをしたのはファラデーさんが初めてかもしれない。
19世紀の英語なので、これなにかな〜という実験用語もいっぱい出てくるんだけど、ツボをおさえた展開に感激しきり。
化学や科学に携わる人は、ファラデーさんにはなれないまでも、この水際だった手並は参考にすべきなんじゃないだろうか。
この分で行くと、正直あんまり興味なかったElectromagnetismについてもスパーン!と分かるようになるかもしれない。一応ピコピコ屋である以上、そういうのも知っておいた方がいいから。
というわけで、小著ながら大変すばらしい内容で、新年はこれをしばらく読んでいくことにしよ( ´ ▽ ` )ノ オススメ。