さびしい人は笑いを求める。
(西脇順三郎 『あざみの衣』 講談社文芸文庫 p237)
あまり評判宜しくない文学系の話題であるが、ぶっとんだ日本語の使い手
西脇順三郎(にしわきじゅんざぶろう)氏のこの一行にはドキっとした。
いわゆる詩作品にはおそろしく蒙(くら)いこっちだけれども、どういうのか
ジョイスや
T.S.エリオットに惜しみない援助をした
エズラ・パウンド(Ezra Pound)は好ましいところがあって、エッセイを随分読ませてもらった。邦訳では
『詩学入門』(冨山房百科文庫)という、カタイ名前に反して相当笑えるエッセイがあるが、これも惜しいことに今では手に入らない(図書館に頼むしかないだろう)。
(なかなかの大著であるが、これも笑いがいたるところにちりばめられている)
ジョイス近辺―――つまり1920年前後はやたらとオモシロイ人間が集まっていて、こっちが翻訳した
ロナルド・ファーバンクの
『サンタール』も、
マックス・ビアボームの
『七人の男』も、1920年前後に生まれた傑作。そういう中で色々と暗躍(?)していたのがエズラ・パウンドという相当に胡散臭い人物だというわけ。これだけエッセイがオモシロイのに、日本語読めるものが殆どないというのは寂しい限り。
(左より、フォード・マドックス・フォード、ジェイムズ・ジョイス、エズラ・パウンド、弁護士のジョン・クィン)