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インテリア 推理小説 ベンヤミン

「外」があるためには、まず「内」がなければならない。内、英語でいえば「インテリア」、つまり「室内」が成立してこそはじめて「街路(パサージュ)」が生まれ、そこを遊歩(フラヌール)することも可能となる。
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 ではその「室内(インテリア)」が生まれたのはいつからか、これをまたベンヤミンが簡潔にまとめている。こうだ。
私人の生活の場はここ[ルイ=フィリップの治世]で初めて労働の場所と切り離され、生活はまず室内で為されるようになる。帳場はその補完物にすぎない。帳場に座って世の動きを考える私人は、室内に溢れるさまざまな幻想に安らぎを求める。この要求は、彼が事業上の考慮を社会的な考慮にまで広げることなど考えていないだけに、ますます切実なものになる。そして、自己の私的な環境を作り上げるに際しては、彼はこのどちらの考慮をも排除するために、幻想に満ちた室内が出来上がってくる。私人にとってはこれが宇宙なのであって、彼はそこに異郷と過去を蒐集する。彼のサロンは、世界劇場の桟敷席なのである。

(ヴァルター・ベンヤミン 『パサージュ論』 第一巻 「パリの原風景」 p17)

 ルイ・フィリップの治世とはつまり1830~1848年の間だが、ここにおいて仕事場とは別に「私室」が成立し、そこに「ものを集める」ということをやり始める。つまり「蒐集家(コレクター)」の誕生というわけで、バルザックが『従兄ポンス』というコレクター小説を書いたのは象徴的だ。
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 しかし、部屋にいてひとりでに物や情報が集まってくるわけではない。つまり「外」に出る必要がある。
彼は群衆の中に避難場所を求める。群衆の観相学への初期の寄与はすでにエンゲルスとポーによってなされているが、群衆とは、ヴェールであって、それを通して見ると、遊歩者の目には見慣れた都市が幻像(ファンタスマゴリー)と映ずる。群衆の中で都市はあるときは風景となり、またあるときは居間になる。その双方をやがて百貨店が作り出す。百貨店はぶらぶら歩きさえ商品の売り上げに利用する。百貨店は遊歩者が最後に行き着くところである。

(同上 p20)
 人口が都市に集中し始め、群集が生まれ、百貨店(グラン・マガザン/デパート)が登場する。デパートの強みは、それまでの小売りと違って、値引き交渉をはぶいて薄利多売をやったことにあるが、それだって人口が増えたからこそ可能になったわけである。

 そして、ありとあらゆる商品(もの)がひとつの建築物におさまるデパートは、蒐集家が住む私室の拡大版といえる。つまり巨大なコレクションだ。
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(ギュスターヴ・カイユボット『雨のパリ』)

 こういうものが生まれてきたのが十九世紀のパリである。だからこそエドガー・アラン・ポオは、アメリカ人でありながらその推理小説の舞台をパリに設定した。探偵オーギュスト・デュパンが友人(主人公)の考えをすべて読みぬくのは、「パサージュを歩いている」、その最中だったということを思い出そう。

 逆に言えば、「遊歩者(フラヌール)」が職業として成立するのは、探偵だけだったのだ。
 遊歩者の姿の中には探偵の姿があらかじめ形成されている。遊歩者にとってはその自らの行動スタイルが社会的に正当化されることが重要とならざるをえなかった。自分の無関心な様子をうわべだけのものに見せるのが彼にはきわめて好都合なことであった。実際、そうした無関心さの背後には、何も気づかずにいる犯罪者から目を離さない監視者の張り詰めた注意力が隠されている。

(同上 第三巻 「都市の遊歩者」 p123)
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(十九世紀の画家ジェイムズ・ティソの描く「婦人部屋(ダーメンツィマー)」)
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by ulyssesjoycean | 2006-07-16 11:09 | 探偵する小説 | Comments(0)
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