十九世紀についての研究書を読むと、どうにも具合が悪くなっていけない。それほど捻じ曲がった時代だったということだろう。
二十一世紀の今だからこそ、フェミニズム批評に対する批判もでてきているけれど、二十世紀にフェミニズムというものが批評の形で登場したのも、むべなるかな――という感じがする。それぐらい十九世紀の世界はおぞましい。
べつにそんな難しいことを言わなくても、当時の文章を読めばすぐにわかる。まずロクなものがない。十九世紀は小説の世紀なんて言われていて、こちらも一通り目を通したつもりだけど、どこにも生気が感じられない文章が大半を占めている。
なにせ
「病人=美」という観念が流行したぐらいだから、当時の絵や文章というのが、どれもこれも不健康。今回読んだ
『倒錯の偶像』も、そうした図版のオンパレードで、正直、
「おえっ」となる。著者のブラム・ダイクストラ氏は大丈夫だったのだろうか。
(『ヴィジェ・ルブラン夫人とその娘』 十八世紀には、こういう溌剌とした絵画がたくさんあるのだが・・・・・)
(それが十九世になると、こうなる。ウォルター・シッカート『倦怠』。こういうのが常態となってしまったからこそ、スリル満点の推理小説が死ぬほど読まれたそうな)